夢物語
 「ほんとに……。みなさんにはご愁傷様としか言いようがありません」


 この日の参加者で、当時現場に居合わせなかったのは私だけ。


 だから結局は第三者、他人事として聞いていられるのだけど。


 居合わせた人たちは、仲間がしでかしたとんでもない事態とその挙句の乱入劇に直面させられ、さぞかしパニックに陥ったことだろう。


 「その後……。その二人はどうなったんですか。今でもどこかで活動続けているんですか?」


 「まず男のほうは、風の便りでは結局離婚したらしいけどね」


 「乱入した奥さんも、もらうものはさっさともらって、離婚したかったらしいし」


 「ただ、職場にも乱入していたようで問題になり、異動と称する左遷に見舞われ、もう札幌にはいないみたいだよ」


 小倉さんと塩田さんは、ある程度の情報を掴んでいるようだ。


 「……女性のほうは?」


 「離婚はしていないらしいよ」


 「えっ、もしかして家庭にはばれなかったとか?」


 「いや、旦那にも匿名で興信所の報告書は届いていたらしいの」


 「えーっ!?」


 私はつい大声を出してしまった。


 「その後どんなゴタゴタがあったかは不明だけど、結局は元サヤに収まったらしいの」


 「旦那さん、許してくれたんでしょうか」


 「子供もまだ小さかったし、世間体を気にして仮面夫婦の道を選んだと私は予想してるね」


 塩田さんは頷きながらそう結んだ。
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