夢物語
 「で、でも彼女は所詮彼女。奥さんだったらそうはいかないかもしれないけれど、彼女だったらいずれ別れるかもしれないし、長く続く保証なんて」


 よく分からないうちに、私はフォローのようなことをしていた。


 「はい。別れさせようとかそういう気持ちはないですけど、好きでいることは自由だと思って、ずっと見守ることにします」


 広田さんはけなげな発言をした。


 ここがポイントなんだけど、現時点で「好き」であるということがその発言から読み取れた。


 「だから高橋さん、また飲み会企画しましょうね!」


 「うん、絶対!」


 広田さんは地下鉄、私はJRの交通手段が分かれたため、札幌駅で手を振って別れた。


 終電は混んでいたものの、並んで順番待ちをしたら無事に座れたため、動き出した列車の窓から流れ去る街灯を眺めつつ、今日のこととこれからのことをあれこれ考える。


 広田さんをはじめ、西本くんに好意を持つ女性は少なくないけれど、彼女の存在がそれ以上の進行に待ったをかけている。


 もしも彼女がいなくなれば……?


 再度、自由に誰でも選べる立場になった時、西本くんは……?


 それは私だけではなく、他の人たちにとっても平等にチャンスが訪れるのだという事実が、私にさらなる不安を与える。


 私はその時いったい……?


 流れる灯りを見つめながら、私はぼーっと考え続けた。
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