夢物語
 心配だから、メールして安否確認しようと思った。


 とはいえ午前三時という時刻が、私をためらわせる。


 家族でもない、……彼女でもない、ただのサークル仲間……友達。


 そんな私が誰よりも早く、連絡を入れていいのだろうか。


 出過ぎた真似じゃないかと気になる。


 でもこんな未曽有の事態、安否確認は友人同士だって別に不自然じゃない。


 いや、他の人を差し置いて、異性の私が西本くんだけに連絡取ったことが後々噂になっては……。


 ♪♪♪!


 「!!」


 迷いをぶち抜くような、メール着信音。


 ディスプレイに西本くんの名前を確認し、大急ぎで内容を確認する。


 件名に「大丈夫だった!?」それだけ。


 急いで送ってくれたのかな?


 「すごい揺れでびっくりした! 居間のグラスがいくつか割れて、停電になっちゃった。震度は四か五だったと思うけど、そっちは?」


 「こっちも同じくらい。揺れが収まった直後はテレビついたんだけど、少ししたら電源入らなくなった」


 同じ市内でも、震度や被害状況に少しずつ差異はあるようだけど、私の家も西本くんのマンションも停電とガラスが少し割れた以外は、大きな被害はなかった模様。


 「なんか東区のほうで、道路が陥没したりとか大きな被害が出ているみたいだよ。最近何度かご一緒してる広田さんの家、そっち方面じゃなかった? 大丈夫かな」


 西本くんの会社の従業員で、東区在住の人がいて連絡があったようだ。


 「東区がそんなことに? ちょっと連絡取ってみる」


 西本くんは広田さんの連絡先を知らなかったので、私が確認してみることとなった。
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