夢物語
 「賢人はまだ、予定はないの?」


 升田妻がいきなり賢人に話を振る。


 「えっ、なんでいきなり俺なんですか」


 「今日のメンバーで唯一の独身男性でしょ」


 「独身なら高橋さんだって、」


 「そうそう、冴香ちゃんも花の独身ね。こうなったら賢人はどう?」


 「あはは。年が違い過ぎて申し訳ないですよー」


 笑ってごまかす。


 チームのマスコットキャラクター的存在の賢人は、西本くんと同い年だから私より八歳年下。


 「それに独身ならば、西本もじゃないですか」


 「そうそう、西本くん離婚してたんだってね」


 「離婚」の一言で、一気に話題は西本くんにシフトした。


 「今日西本は来ないのか」


 谷さんが西本くん不在に言及。


 「彼は、運動会シーズンが終わるまでは忙しいからね」


 升田妻が答える。


 「運動会シーズン? 小学校の運動会に関する仕事をしているんだっけ?」


 最近練習への参加回数が減っている谷さんは、西本くんの仕事に関してまでは予備知識がなかった。


 「西本くんって父親の仕事を継いで、印刷の仕事をしてるんだよね」


 「印刷? 運動会のプログラムの印刷でもしてるの?」


 「いや、布などへのプリントのほう。ユニフォームとかゼッケンにプリント加工をする仕事だよね」


 「今度うちのチームでユニフォーム制作する際は、是非お願いしなくちゃって話をしてるんだ」
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