夢物語
 家に戻ってすぐ、タブレットのほうからラインのアプリをダウンロードしてみた。


 初期設定を済ませ、準備は案外簡単に整った。


 しかしながら、それだけでは友達とは繋がれない。


 直接相手の人のQRコードを読み取らないとだめそうで、設定はしたもののそれ以上はどうすることもできなかった。


 停電が解消されないまま、時間がゆっくりと流れていく。


 まだ外は明るいけれど、もうじき夕方となり夕闇に包まれると……。


 それまで停電が続いていれば、夜は真っ暗闇になるはず。


 懐中電灯とランタン総動員しても、電池切れになったらジ・エンド。


 食料同様乾電池も、とうの昔に完売。


 品切れとなったスーパーやコンビニは、次々店を閉めてしまいどこにも買い物にも行けない。


 唯一主導発電式のラジオには懐中電灯機能が付属しており、レバーをぐるぐる回して発電すればラジオと電灯は何とかなる。


 幸い我が家は、レトルト食品やペットボトルは豊富に買い置きしておく伝統だったため、被害が何週間単位で継続しない限り食べ物に困ることはないだろう。


 停電のため電子レンジは使えないけれど、水とガスは通常通りで、電気を使わない調理は問題なし。


 ただ冷蔵庫が使い物にならない。


 ドアを閉めたままにしておけば、しばらくは冷蔵、冷凍された状態は保てるものの、それも時間の問題だ。


 夏のような暑さが続いており、生ものや冷凍食品がいずれは溶け始める……。
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