夢物語
 そして暗くなってきた。


 停電で信号機は消えたままだし、ガソリンも給油できない状態が続いているため、車を運転してどこかに出かけるのもはばかられる。


 お風呂に入られないのも憂鬱だった。


 水は出るものの、湯沸かし器は電気なしでは動かないため、体を洗いたいならば水風呂に入るしかない。


 この暑さでも水風呂はきついので我慢。

 
 じっとしたまま夜を迎えるだけ……。


 「あれ?」


 もう二条ほど南にあるマンションの、灯りが点いているのが窓から見えた。


 バッテリー残量を気にしつつFacebookなどで状況確認すると、同じ札幌市内でもすでに停電から復旧している地域もあることを知った。


 しかも区や地域単位ではなく、同じ町内でも道路を挟んで停電中のところと復旧したところとが隣接していたりすることも。


 「えーっ羨ましい」


 我が家周辺は、復旧の気配すらない。


 その時西本くんからのメールに気が付いた。


 昼間はずっと会社休業の後始末に追われ、停電継続中のため暗くなったのに合わせて作業を中断、家に戻ってきたらしい。
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