夢物語
 バッテリー残量を気にしつつのメール交信。


 一連の震災による、被害および復旧状況を改めて伝え合う。


 停電の続く不安な夜、こうして繋がっていられるだけで目に見えない安心感に包まれる。


 ……彼女はどうしてるの?


 受信ランプが点滅する度に喜びを感じつつ、同時に現実がよぎる。


 私とこうしてメールしていて大丈夫なの?


 ……暗闇と余震におびえながら、そばにいてほしいと切ないほどに願いつつ、夜が明けるのを待ちわびているんじゃないの?


 さすがに彼女の隣で私にメッセージを送るために、スマホを握り続けているわけはない。


 きっと西本くんも部屋に一人、静かな夜を過ごしていると思われる。


 彼女を一人にしたままで。


 ……彼女には申し訳ないとも思いつつ、それ以上に停電による真っ暗な夜を誰かと時間を共有できる心強さと安らぎが私を包んでいた。


 やがてバッテリーが完全になくなり、交信ができなくなるまでたわいのないメールの送受信は続けられた。


 最初は現状報告だったはずが、やがて日々のサークルの話となり、昔の話なども延々と……。
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