夢物語
***


 私の住んでいる地域は、地震発生から二日目の夜を迎えても、依然として停電は続いていた。


 二度目の真っ暗な夜を迎え、もううんざり。


 わずか数百メートルしか離れていない長原さんの家は、一日目の夕方すでに復旧しているのに。


 病院や警察など、公共の重要な施設周辺の地域は、優先的に復旧してもらえるという話がまことしやかに流れてきたけれど、あくまで噂。


 それにしても復旧のスピードがあまりに違い過ぎて、停電の続いている地域の住人はイライラ。


 携帯電話の不通は夜のうちに快勝していたものの、肝心の充電がまだできなくて結局電話が使えない状態。


 長原さんの家にお邪魔して充電させてもらった。


 職場の周辺も停電が続いていて、二日目も仕事は休みに。


 長原さんの家にお邪魔した以外、ガソリンも備蓄が底をついているようで給油制限が続いており、今ある分がなくなっては運転も不可能になるため、むやみやたらと遠出もできずじっとしているより他にない。


 ひたすら我慢の二日目が刻一刻と過ぎていき、再び夜が来て二度目の闇夜を憂鬱に過ごしていたところ……。


 ふと外を見たら、家の前の街灯が急に明るくなった。


 突然電気が戻ってきたようだ。


 慌ててブレーカーを戻し、居間の電気を点けたところ……灯った!


 ようやく停電は終わりを告げ、文明生活に復帰することができた。


 電気が戻るとお湯が沸き、シャワーもできる。


 長かった暗くて不便な夜に、終止符が打たれた。
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