夢物語
 停電から復旧し、電話やメールも元通りに使えるようになって、一時運休していた公共交通機関も運転を再開。


 商店では食材が不足していたり、ガソリンスタンドでは給油制限が未だ続いているものの。


 電気・水道・ガスなどのライフラインはほぼ地震前の状態に戻って、日常生活は整ってきた。


 地震が発生した週の日曜日。


 公共交通が普通通りに運転していること、そしてお店のほうも営業を再開していることを確認し、飲みに出かけることとなった。


 このタイミングで、百キロ以上離れた地方都市から、あの田中さん(男性)が出張のため札幌を訪れていた。


 田中さんは私と同い年の競技仲間で、何度か合同宣戦を張って大会に参加している。


 今年の春は、うちのチームの賢人が問題発言などを繰り返して、関係悪化が懸念されたけれど、何とか事なきを得たのだった。


 その際、相談に乗ってくれたのが西本くん。


 おかげさまで田中さんとの関係も修復し、この度の来札ついでにビアガーデンにご一緒しようという話になっていた。


 ところが想定外の震災発生。


 田中さんも慣れない出張先でどう過ごしているか心配だったし、一時は中止も考えたのだけど。


 災害から無事復旧しつつあり、この期間中の出来事を集まって話したいという気持ちもあり、飲み会は予定通り開催することとなった。


 札幌の夏といえば大通公園のビアガーデンだけど、盆踊りの季節の前に終了となってしまうため、別の会場を検索。


 「JR札幌駅方面を探せば、ジンギスカン食べ飲み放題のいい店ありますよ。営業再開しています」


 田中さんに会いたいという西本くんも参加することとなり、幹事役を務めおススメの会場を予約してくれた。


 日曜日の夕刻、現地集合。


 震災直後の札幌は、天候にも恵まれ気温も高く、絶好のビアガーデン日和。
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