夢物語
 「日本代表の選手も大変でしたが、もっと大変だったのは対戦相手……チリでしたっけ? 地球の反対側からわざわざ訪れた最中にこんな地震とは、運が悪すぎですよね」


 「チリも地震多いんですかね。それにしてもいきなり震度五とか六で、死ぬほど怖かったのでは」


 ……しばらく震災関連の話題が続き、その後ようやく乾杯。


 今日は車で来ているわけではないので、たくさん飲める。


 震災中、じっくり食事もできなかった反動で、全員食欲旺盛。


 お腹を空かせて参加しているため、準備されたお肉を三人全員あっという間に平らげていく。


 ジョッキも次々に空になる。


 「田中さんの地元もお肉の名産地ですから、もっと違うメニューにすればよかったですかね」


 「ここも十分美味しいですよ。それにやっぱり、札幌のビールは美味いです」


 飲み始めて程なくして、夕暮れの時間が訪れた。


 夏至からもうすでに二か月以上経過し、日没が早くなってきている。


 日は短くなってきても、気温の高い季節はまだ続いている。


 夕焼けの鮮やかな光に包まれながら、アルコールが快適に前身に行き渡っていく。


 「そうだ、天気予報では今夜遅くから雨マークじゃなかったですか?」


 田中さんの発言で思い出したけど、三時間ごとの予報では確かに午後九時以降に雨のマークが出ていた。


 今は綺麗な夕焼け空で、これから天気が下り坂とはにわかには信じられないけれど。
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