夢物語
***


 「それじゃ、遅くまでありがとうございました。今度は是非、お二人で我々の地元までお越しください」


 一次会のビアガーデンの後、二次会は近場の居酒屋で歓談。


 そこにも数時間滞在し、そろそろお開きとなったのは夜の十時半過ぎ。


 休前日だったらまだまだ飲みたい雰囲気だったものの、今宵は日曜日で明日は月曜日。


 一週間の始まりの前に、あまり夜更かしは許されない。


 田中さんも明日の朝早く、ようやく地元に戻れるという。


 出張中に被災し、なかなか帰ることができなくなったため家族に心配させていたけれど、ようやく明日無事な姿を見せられそうだ。


 ……別れ際に田中さんが口にした、「今度はお二人で」という言葉。


 とりわけ深い意味はないのだろうけど、内心どきっとしてしまう。


 「また試合の案内とかあれば、連絡お待ちしています。その際は高橋さんと相談して、是非チーム編成して遠征したいと思いますので」


 西本くんも特に気にした様子はなく、自然体で答えている。


 「ではまた」


 「お疲れさまでした」


 札幌ど真ん中のホテルに宿泊が続いている田中さんは、徒歩で都心へと消えていった。


 私は西本くんは地下鉄で、私はJRで帰宅予定。


 地下鉄の駅までは、二人きり……。
< 146 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop