夢物語
 「冴香さん、再来年一緒にオリンピック観に行きませんか」


 「は?」


 思いもよらぬ言葉に、私は驚き立ち止まり振り返った。


 そしてそれは、思う壺だったようだ。


 「オリンピックって……、札幌? それとも東京?」


 「まずは来年、チケットの抽選に申し込んで、当選してからの話となりますけどね」


 気が付くと、距離が近くなりそのまま腕の中。


 一瞬周囲の目が気になるものの、ここは裏通りで人通りの少ない小道。


 地下鉄の入り口までの、近道として歩みを進めた裏通り。


 脇には明治時代に建てられたらしい、レンガ造りの建物。


 当時は工場だったらしいけど、今は喫茶店として利用されているらしい。


 かつてはレンガ造りの工場が並んでいたこの辺りは、少し異国体な雰囲気。


 街灯もそれに合わせたのか、異国情緒溢れたデザインのものが用いられている。


 そんな非日常的な街並みの中、私は年下の男の腕の中。


 雨に打たれながら……。
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