夢物語
 今日は、札幌から百キロ近く離れた町で大会がある。


 家族には「チームのみんなと前泊」と嘘をついて、昨日のうちに家を出た。


 チームのみんなは今日の朝出発で会場入り、前泊しているのは私と西本くんだけなのに。


 西本くんもきっと彼女に、私と同じような嘘をついて家を出てきたのだと思う。


 そしてチームのみんなには前泊のことはひた隠し、他の人たち同様、朝出発したのだと偽る。


 偶然私と西本くんのみ同じ方面のため、車に乗せてもらったと言っても誰も不審がらないだろう。


 ……こんなふうに様々な嘘をついても、二人きりの夜を過ごしたかった。


 地元ではなかなか実現できない、二人だけの時間。


 誰にも話せない、内緒の関係……。


 綿密に積み重ねられた嘘と秘密は、いつかどこかからほころびが出てきそうで怖い。
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