夢物語
***


 「また優勝しちゃったね」


 帰り道も二人きり。


 大会では勝ち進み、決勝戦で勝利してその後表彰式を終え帰路につく頃には、辺りも真っ暗に。


 いつもならこの後どこかで打ち上げの席などが設けられるのだけど、この日は終わったのが遅く、札幌まで戻るとかなり夜も更けるため、明日は月曜日ということもありそのまま帰宅することとなった。


 「逆に二人きりの時間が増えるから、ラッキーだったとも言えるね」


 運転席でそんなことを無邪気に口走っている。


 私は慣れない助手席で、そっと微笑んでいる。


 長らく一人での行動が多かったため、いつも自分でハンドルを握ることが多く、誰かの助手席に乗ることが続くのは……あの頃以来?


 ……今日も家が同じ方向の者同士、朝一緒に現れて帰りも一緒に帰っていく。


 チームの誰も疑わない。


 これまでの私の行動が真面目一本で、チームみんなからの信頼が厚いから他ならない。


 同様に西本くんも、人当たりがよく温和な性格で、誰からも好感を持たれるタイプ。


 こんな私たちが一緒にいるのはただ単に方向が同じだからであり、仲がいいのは競技を通じた同志であるからだとみんなは信じ切っている。


 日頃の行いがよかったゆえに、危険が伴う今の関係にもかかわらず、誰にも疑われることもなく密かに継続することができている。
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