夢物語
 「お疲れさまでした、と……」


 帰宅後、お風呂に入り就寝前、お礼のメールを送る。


 彼女に「SNS禁止令」なるものを発令されている西本くんには、連絡の大部分はEメール。


 もしくは直接電話をかける。


 「今時、SNS禁止令だなんて」


 つい苦笑しながら、独り言を口にしてしまう。


 サークルの他のメンバーも、SNS禁止令を耳にして一概に驚いていた。


 禁止令発令とはただ事ではない、以前西本くんが何か裏切り行為のようなことをして、彼女が腹に据えかねて禁止令を発令したのだと思った。


 しかしながら本人曰く、彼女が過去に何やら嫌な思いをしたため、SNSに嫌悪感を抱いているとのこと。


 波風立てたくないから、その気持ちに配慮して西本くんもSNSを自粛しているのだと。


 だからこそ私は、こっそりアカウントを取ってほしいと願ったことがある。


 私と連絡を取り合うためだけの、彼女には内緒の手段が何かほしいと……。
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