夢物語
 だけどその願いは、心の奥にそっとしまい込んだ。


 あえてケンカを売るような、もしくはトラブルを引き起こすような真似をするのは無意味だと。


 こっそりアカウントを取ったとして、何らかの拍子で彼女が西本くんのスマホを見て、ばれる可能性がある。


 そうなれば一気にトラブルに発展し、私とのことも気付かれるかもしれない。


 「本妻」へのちょっとした対抗心から余計なことをして自爆するのは愚かであると、私は過去の経験から十分に学んでいる。


 出過ぎた真似をしない、それが「二番目」の存在である私が生き延びるためのモットー。


 「また大会頑張りましょう」などと、当たり障りのない文章に終始。


 SNSに手を出さないまでも、愛を語るメールなどを文章化して、読まれでもしたら……それこそ世界の終わり。


 証拠を残すようなこともしない。


 それが密かな恋を長続きさせるための最善策。
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