夢物語

***


 秋晴れの日曜日。


 海岸沿いの道を走る車の助手席に、私は揺られている。


 札幌市を離れ北上するにつれて、市街地は住宅街へと推移し、やがて民家もまばらな地帯へと入っていく。


 ……休日に大会参加以外の理由で、二人きりでどこかに出かけるのは初。


 大会参加の行き帰りだったら、万が一関係者に見られても言い訳がしやすいけれど、全くのプライベートの場合はどう言い逃れをしようか迷う。


 別に普通にしてればいいんじゃない? と、西本くんはあまり気にしていないようだけど、もしもうちのサークルの人とばったり会ってしまったら?


 挨拶だけですれ違う程度じゃ済まないような間柄の人だったら?


 「だったら、今度の親睦会の景品を買いに来たって言えば?」


 ちょうど来週末は、サークルにゲストを招いて親睦会が開催される。


 その景品担当が、ちょうど私と西本くん。


 西本くんは予算を預かっていて、その予算内で全員分の景品を調達するように代表より仰せつかっている。


 あえてこんな遠くまで買い物に来る必要もないのだけど、目的地であるオープンしたての「道の駅」では野菜の即売所もあり、そこで野菜を安く調達できることもあって、二人きりで出かける理由としてはあながち嘘っぽくもないかも。
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