夢物語
 「今度は二人で、温泉行かない?」


 「え……」


 次の約束?


 次の計画ができると、それを励みに忙しい毎日をやり過ごせて行けるから、生きがいになる。


 「そうだ、来月初めにはまた遠征があるよね。その頃標高の高い地域はもう紅葉のシーズンだから、帰りにどこか寄っていかない?」


 「……」


 続々と新たな計画が提案される。


 二人きりの時間が次々保障されていく。


 この他にも、サークルメンバーとの飲み会も予定されている。


 一緒に過ごせる時間がどんどん増えていく……。


 「そろそろ日没だよ」


 これからの計画が楽しみで頭がいっぱいになっているうちに、辺りは日の入りの時を迎えていた。


 太陽がゆっくりと水平線に迫って、触れて、一体化しそして沈んでいく。


 日没の瞬間をじっくり観察したのって、いつ以来だろう。


 少なくとも、好きな人と一緒に見守っていたのは初めてのこと。


 好きでたまらない人のぬくもりを感じながら、ゆっくりと時間が過ぎていくのを見送る……。
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