夢物語
 彼女いるの知ってたにもかかわらず、自分の気持ちを抑えられなくなって……。


 互いのぬくもりに触れてしまえば、二人の背景や取り巻くものなど、どうでもいいとさえ思えてしまう。


 モラルでさえも。


 ……それと同時に。


 もう二度と恋などしないと誓い、長い間こういうこととは無縁だったのに、身も心もあの頃のようにたやすく染められつつある自分に驚いている。


 火が点いた体はもう、誰にも止められない……。


 「……」


 西本くんの肩越し、そしてフロントガラスの向こうに一つ、明るい星が見えた。


 秋の星座は寂しいはずだし、あんな明るい星はない。


 惑星だろうか。


 それとももはや冬の星座が見え始めているのか。


 一瞬そんなこと考えていたけれど、やがてどうでもよくなっていた。
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