夢物語
 これまで幾度となく小耳に挟んではきたけれど。


 西本くんと彼女は、それぞれ別の世界をそれぞれ有していて。


 さほど束縛もなく、互いに自由な時間を満喫できていることが多い。


 それゆえ彼女持ちでありながら、独身者などに混ざって気ままに遊びに付き合ってくれている。


 その言動に、全く彼女の影は感じない。


 気配すら見えない。


 誰かがこうして言及しない限りは……。


 ただ、互いの行動を把握しなくても平気というのは、どういう意味を持つのだろう。


 それだけ相手を信用しているということか。


 それとも、もはや無関心な存在になりつつあるということか……。


 「そろそろ結婚とか、考えないの?」


 彼女の話題になると必ず、こういう流れになる。


 「全然」


 そしてその都度、西本くんはこう答えてはぐらかす。


 「彼女だってもう、二十代終盤なんでしょー? 結婚のにおいもないまま時間だけ過ぎていくなんて、生殺し状態じゃない?」


 宴席でのみんなの会話を、素知らぬ顔で笑顔で聞いている。


 ……胸が痛い。


 何もないふりで、黙って聞いているだけでもこの胸は痛む。


 現実を思い知らされる。


 私とは幾度となく体を重ねても、最後に帰る場所は別なのだという事実を突きつけられる。
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