夢物語
 「それ、ビールとか入っていて重いですよね。僕持ちますから」


 「でもこれくらい、私に持たせて」


 買い物袋は合計三つになった。


 その内二つを手にしたら、西本くんに取り上げられてしまう。


 「ならば高橋さんは、これだけ持ってください」


 そして一番軽い袋を返され、重い袋二つは西本くんが運び始めた。


 スーパーを出て、松元さんの家までは徒歩数分。


 「今日、雨降らなさそうだね」


 スーパー駐車場を通り過ぎ、隣接した公園を横切る。


 湿度が高いのか、木々の匂いがさわやかに漂う。


 「いつも外で焼き肉するたび、雨が降り出すこと多くないですか? きっと誰か雨男がいるんですよ」


 「西本くんじゃないの?」


 「まさか。きっと賢人ですよ」


 「その可能性が高いね」


 笑いながら公園を横切ると、そこはもう松元さんの一軒家。


 火おこし担当の賢人は灰をかぶったようで、道路に出て灰を払っていた。


 さっきまで噂をしていたせいもあり、その姿を目にして笑ってしまう。


 「何、俺見て笑ってるんですか。西本と俺の悪口言ってませんでした?」


 「別に……」


 笑いをこらえて、食材を玄関先まで運び込む。
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