夢物語
 ずっとこのままではいられない、いつかは終わりを告げると知っていて。


 迫り来る終幕の足音に怯えつつも、断ち切ることも離れることさえできずに隣に居続けている。


 夏を通り過ぎ、秋を越えて季節は冬に。


 北海道の長い冬を越え、二人でこうして春の訪れを迎えることができるのか、今はまだ分からない。


 明日のことすらどうなるか分からないのに、来年の春のことなんて……。


 全てが発覚するかもしれないし、そこまで至らなくとも彼女の存在を再確認し、元の生活が恋しくなるかもしれない。


 単純に、私に対する気持ちが覚めてしまうかもしれない。


 人間の心の移ろいなんて、季節の移ろいよりもはるかにたやすいもの。


 前の時でそれは思い知らされた。


 いずれ直面するであろう別れの瞬間、その時冷静でいられるようにと祈りつつ。


 今は他のことは何も考えず、ただそばにいるだけでいいという思いで強く抱き返した。
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