夢物語
 でも。


 絶対に発覚する気がしない。


 妙な自信が、私には満ち溢れていた。


 現に、疑っている人は誰もいないだろう。


 ただサークル仲間として仲がいいだけとみんな思っていて、それ以上の関係、一線を越えているなどとは誰一人として。


 過去の失敗例から学習した私は、万全の対策を練っていた。


 自分の幸せを周囲にアピールしたいという欲望や承認要求を徹底的に押し殺し、水面下で密かに関係を続けることを優先。


 目先の欲に捕われて、大切なものを失ってしまうようなことはもう二度としたくない。


 もう二度とあんな思いだけは……。


 私は大きく息を吸い、誓いを新たにした。


 そして視界の中に、大切な人の姿を求める。


 西本くんは男子メンバー数人と共に中二階に上がり、全ての窓のカーテンを閉めていた。


 夜間の練習中はそのままでもいいのだけど、今日みたいな昼間のイベント時は、太陽の光が競技進行の妨げになるため、体育館の窓全てを遮光カーテンで覆う。
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