夢物語
 九時に一般入場開始だけど、私たち主催者側は八時半に集まって準備を進めていた。


 ほぼ準備は整い、あとは来場者の入場を待つだけとなった。


 平成最後の天皇誕生日。


 ちょうどクリスマス前の三連休。


 本日イベント終了後、チームの忘年会。


 それからは?


 まだ約束をしていなかった。


 明日は振替祝日だけど、クリスマスイヴ。


 やはりクリスマス目前、西本くんは帰るべき場所に帰っていきそうな気がして。


 ……聞くのが怖い。


 でも一緒にいたい。


 そんな問答を、内心繰り返していた時だった。


 背を向けて景品用お菓子の数を数えていた私の背中越しに、体育館のドアが開いた音がした。


 チームの誰かがトイレから戻ってきた程度にしか思わなかったのだけど……。


 「あれ? あの人どこのチームの人だっけ?」


 「知らない人だね。私服で来てるよ。着替えは器具室でやってもらえばいいんだっけ?」


 イベントにわざわざ私服で現れる人も珍しい。


 普通はあらかじめ運動着姿で来るものだけど。


 顔を上げると、女の人の姿が見えた。
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