夢物語
 「ちょっと。何なんですかいきなり」


 横にいた長原さんが、女の人に尋ねる。


 「どちら様ですか?」


 松元さんの問いにも、女の人は答えないまま。


 明るい色の唇を強くかみしめていた。


 私も何が何だか分からないまま……。


 「志穂(しほ)!?」


 その時、奥のほうから西本くんの声が聞こえた。


 志穂と呼ばれた女の人は、西本くんのほうを振り向く。


 私は全てを察した。


 この人が……西本くんの彼女なんだ。


 何らかの理由でここを訪れ……私に指輪をぶつけた。


 言うまでもなく私に対して、ひどい怒りを覚えている。


 きっと何もかもバレてるんだ。


 そうとしか思えなかった。
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