夢物語
 ……。


 「……好みのタイプですか? 女優の山口のぞみ」


 「正統派美人女優でしょ。だけど西本くんよりだいぶ年上じゃない?」


 「年上ってこと感じさせないあの美貌、尊敬に値しますね」


 今日もこの場の話題の中心は、西本くん。


 年長の主婦たちにあれこれいじられており、質問攻めに合っている。 


 「あれ? 山口のぞみって、冴香ちゃんに似てない?」


 小倉さんが急に私に話を振る。


 自分は蚊帳の外だとすっかり油断し、お肉をつまんでいた私は、不意の展開に慌ててしまう。


 「えっ、まさか。何言ってんですか」


 そんなこと第三者に言われたこともなければ、当然自覚したこともないわけで。


 「だったら好みのタイプってことだね。条件が整ったんだし、付き合っちゃえば!?」


 「や、やめてください」


 つい顔を背けてしまう。


 第一私は、その山口のぞみよりもさらに年上。


 山口のぞみは芸能人だから、あの年齢であの美貌を保てているのであって。


 一般人の私は、所詮……。
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