夢物語
 当時私は二十代半ばで、まだまだ夜遊びの楽しいお年頃。


 彼氏ができたら、さすがにそっちを優先しなければならないだろうし、夜遊びからも卒業の頃合いかと思っていたけれど。


 優はなにも制限してこなかった。


 自由にしてくれた。


 自分も趣味がいくつかあって、そっちを優先させたいから、私にも自由にしていいと。


 たまに「付き合っている意味」というものに疑問符を感じることもなかったと言えば嘘になるけれど、居心地のいい付き合いが続いた。


 一人で過ごす寒い夜など、寂しさのあまり優を責めたくもなったりしたけれど、失うのが怖くて不満は飲み込んでいた。


 これほど好条件の男、次はそう簡単に見つからないだろう……そういう打算もあった。


 経済的に恵まれ、外見も……。


 優と私が一緒のところを目にした友人は、口を揃えて「美男美女カップルだね」と称賛してくれる。


 それが私の自尊心を刺激する。


 ……今のポジションを失いたくない。


 そう簡単には。
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