夢物語
 秋の終わりの午後。


 姉からの電話が、私の平穏な日々を終焉へと向かわせることになる。


 「志穂、この前のサッカーの試合。優くんは観戦に行ってたよね?」


 「うん。行ってたみたいだよ」


 その日私は日中からちょうど、高校時代の友達と遊ぶ約束をしていたので、優が出かけてくれたのは都合よかったと記憶している。


 「誰と行ったか知ってる?」


 「いつもの仲間とかじゃないの?」


 職場関係のサッカー愛好者仲間か、スポーツサークルの仲間たちとかだと思うけど、私はサッカー観戦には大して興味がなかったこともあり、優が誰と観戦に行こうと大して関心を持っていなかった。


 「優くん、女の人と出かけてたみたいなんだけど」


 「女?」


 一緒に出かけた仲間の中に、女が混ざっていた程度にしか考えなかったのだけど、


 「いや、それが。どうやら二人きりだったみたいで。しかもかなり親密な雰囲気だったようなんだけど……。志穂は何も聞いていないのかな?」


 「二人きり? 親密?」


 なぜ姉はまるで見てきたかのように、優が女と親密な様子でサッカー観戦していたことを知っているのか尋ねたところ、


 「実はね……」


 私たち姉妹の共通の友人で、優とも面識のある人がたまたま観戦に家族で出かけていて……。


 「オーロラビジョン!?」


 札幌ドーム内の大画面、オーロラビジョンに、優とその女の人との仲睦まじい姿がでかでかと映し出されたらしい。
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