夢物語
 「志穂」


 気が付いたら時計はもう真夜中。


 ここ一週間ばかり、裏切りの事実が証明されて腹立たしさでいっぱいだったのだけど、抱かれてしまうとそんなのどうでもよくなってしまったようで、余韻に包まれたまままどろんでいた。


 そんな中、名前を呼ばれて現実に呼び戻された。


 「何……」


 こうやって体を重ねて、やっぱりお前が一番だと分かったとか、もっとそばにおいでだとか、甘い言葉を期待して顔を向ける。


 「そろそろ、言わなきゃならないとは思っていたんだけど」


 まさか。


 ここで浮気の告白?


 懺悔?


 もっと甘い時間に酔っていたいのに、そんな話は今じゃなくても……と正直感じた。


 でもいずれははっきりさせるべきことだし、程なく訪れる新しい年が始まる前に、綺麗さっぱり片付けておきたいし……。


 優はどう切り出してくるか。


 固唾を飲んで次の言葉を待った。


 すると想定外の展開に!


 「別れないか」


 は?
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