夢物語
　一見すると、私の将来を考えて苦肉の策で別れを切り出したような説明。


　確かに結婚というゴールのないまま付き合いを続けて、今はいいかもしれないけれど。


　これが三十そして四十になった頃、やっぱり結婚や出産がしたいって望んでも、それから優の次の相手を探すとなってもそうたやすく見つかるか……。


　場合によっては手遅れになるかも。


　今後のことに影響が出るくらいなら、二人の付き合いを今のうちに終わらせた方がいいというのも正論かもしれない。


　でも騙されない！


　私の将来のためなんて言っても、本当は他に好きな人ができただけ！


　「他に……いるんでしょ」


　「他？」


　「私以外の人がいるんでしょ。だからもう私は要らない……」


　「仮にいたとしても。それが別れの理由じゃない。二人の今後のためだ」


　他の女の存在を優は決して認めはしなかったけど、否定もしなかった。


　だったらこれは何なの！？　とあの日の写真を見せてやりたかったけれど、結局できなかった。


　お互いの主張が平行線のまま、私は優の部屋を出た。
< 242 / 302 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop