夢物語
 優はベッドで背を向けたまま、動かなかった。


 予定より早い帰宅となったけど、すでに公共交通は終わっているし、優の送迎もなかったため、タクシーを探した。


 優のマンションは国道からちょっと奥で、ここまではタクシーも来ないため国道まで歩く。


 街の中心部からは数キロ離れており、クリスマス前の連休で歓楽街は賑わっているはずだけど、ここは深夜の静けさに包まれている。


 国道沿いにお菓子屋さんがあって、そこの横に植えられている木にはイルミネーションが施されていて、夜中でも灯りを放っている。


 イルミネーションの光で、クリスマス目前であることを再確認する。


 タクシーが見つからないので、自宅方面へとゆっくり歩く。


 クリスマスは当然一緒に過ごすと信じて疑わなかった。


 クリスマス目前に、まさかこんなことになるとも……。


 間もなく郊外から都心へと戻る空車のタクシーとようやく遭遇し、乗り込んで帰路へ。


 私の家までは車では十分もかからないけれど、深夜料金だったため千円は超えた。


 ……一人、部屋の鍵を開けて中へ入る。


 こんなに早く帰宅する予定ではなかったので、暖房は止めてあって寒い。
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