夢物語
 西本くんが彼女の後を追って出て行った後、呆然と立ち尽くしたままの私に升田会長は、「今日はもう帰りなさい。あとは残ったメンバーでやりくりするから」と言ってくれた。


 さすがの私もこの状況で平然とイベント運営に集中できないので、帰らせてもらうことに。


 長原さんの話では、こんな事態が発生しみんな落ち着かないだろうとのことで、升田会長は今日のイベント中止も考えたらしい。


 しかしすでにゲスト参加の他のサークルの人たちが到着し始めたので、予定通りイベントは開催の運びとなったようだ。


 私と西本くんという、チームの主力選手が不在で他サークルの人たちは寂しがっていたようだけど、私は急な体調不良(あながち嘘ではない)、西本くんは急な家庭の事情(これも嘘ではない)で不参加となったと説明された様子。


 無事にイベントを終了した後、ゲストをまず帰宅させ、それからメインメンバーもいったん帰宅し夜になって急遽近所の居酒屋に再集合。


 今日の一連の出来事を時系列順に振り返った後、今後どうするかについて相談したようだ。


 冒頭の「なんでうちのクラブはこう何度も~」は、その際の升田会長の台詞。


 何度も、というのは私が加入する以前にあったトラブルを指している。


 チームの古株である小倉さんや塩田さんと仲良しだった主婦の一人が、同じチーム内の妻帯者と不倫関係に陥り、奥さんが試合会場に乱入してきたという事件。


 それからもう十年以上になるのに、代々語り草となっている大事件。


 歴史は繰り返す。


 その言葉は他でもない私自身が証明してしまった。
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