夢物語
 そして一昼夜経過した今、長原さんが代表して私に電話をかけてきた。


 「あの時とは違って不倫じゃないし、独身同士の自由恋愛だからこっちが干渉すべきことではないのかもしれないけれど、西本くんの彼女が乱入してきた事実は消えないのも事実」


 いつどこで発覚したのか予想がつかない。


 西本くんの部屋では合わないとか、一応気を付けてはいたのだけど。


 二人の女性と同時進行というのは、いくら西本くんが上手くやっているつもりでも、どこかに無理があったのかもしれない。


 知らないうちに彼女は事実を知り、激怒して体育館に乱入……。


 腹が立っただけ、私に文句を言いたいだけならなにも体育館に乱入する必要はなく、帰りの駐車場で待ち伏せでもすればいい。


 自分に火の粉がかかるにもかかわらず体育館の中に入ってきて、私に指輪を投げつけたということは……。


 周囲の人に事実を知らしめて、私や西本くんに恥をかかせるのと同時に今後チームに行きにくくさせる意図もあったのだろう。


 報復……。


 「あんなことになって、冴香ちゃんも西本くんも恥ずかしいと思うけど、あくまで独身者同士のトラブルで犯罪者になったわけではなし。乗り越えられるのならこれからも来てほしいというのが私たちの総意」


 長原さんは昨日の緊急会議の決定事項を伝えてくれた。


 「ただ、恋愛問題はプライベートなこととはいえ、うちのチームを舞台にしてのことだから、全く無関係とも言い切れない。今後また繰り返しても関係ない人に迷惑がかかるケースもあるし、今後の参加は三人の間のことをはっきりけりつけてからにしてもらえないかな」
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