夢物語
 この三角関係に、終止符を打つ。


 今まで失うのが怖くて、許されないとは知りつつズルズルと関係を続けてきた。


 でもこんなことになった今、決断を下さなければならない。


 西本くんはどう考えているのだろう?


 「西本くんはどうするつもりなんだろう」


 長原さんの言葉は、私の気持ちを代弁するようなものだった。


 「彼は正直、八方美人なところがあったと思う。どっちも好きで、どちらかを失うのは惜しくて今までやってきたんだろうけど、こうなった以上どっちつかずはもう通用しないよね」


 そう、西本くんは誰にでも優しい。


 でもそれは時に、人を傷つけることもある。


 鈍い刃は鋭い刃よりも、刺された時によほど苦しい……。


 「それより冴香ちゃんは、これからどうしたいの」


 「私?」


 「彼女いるの知ってて、拒めなかったわけだよね」


 「……」


 「サークル活動を通じて、ずっと仲良くしていたのは知ってたけど、あくまで仲間同士の絆に過ぎないと思ってた。まさかこんなことになっていたとは誰も気付かなくて、みんなびっくりしてた」


 以前チーム内で不倫関係に陥り、発覚まではいかなくとも騒動となり仲も引き裂かれ、チームにも居づらくなったつらい過去。


 もう二度とあんな思いはしたくないと誓っていたのに、何の因果かまたしても許されない関係を。


 過ちを繰り返してしまい、再び何もかも失おうとしている。
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