夢物語
 昨日から今日にかけて、西本くんとは連絡を取っていない。


 体育館に彼女が乱入してきて、混乱の中離れ離れになったのが最後。


 私は升田さんの配慮により帰宅を勧められ、西本くんは彼女を追いかけて体育館を後にした。


 それから連絡がないまま。


 私も何をどう伝えればいいか迷ってる上に、そばに彼女がいて監視されている可能性があると考えるだけで、電話もメールも躊躇してしまう。


 彼女のこと、シホって呼んでいた。


 他のメンバーが西本くんのスマホに保存された画像を見て、「可愛いー」って騒いでいたから想像は付いていたけれど。


 余裕のある男が手に入れる若くて綺麗な妻「トロフィーワイフ」のようだと、周りの人たちが冷やかしていたのを思い出した。


 何も申し分のない彼女のように見えるけど、なのになぜ……。


 「きっと西本くんは、見た目だけであの子を選んだんだよ」


 長原さんがまたしても、私の心を見透かすような台詞を。


 「若くて見栄えがいい子なら、誰でもよかったんだよ。そばに置いておいて、連れて歩く分には。でも何かが足りなかったから、冴香ちゃんのことも必要としたんだと思う」


 仮にそうだとしたら、それだけの理由で選ばれたほうはたまったもんじゃないだろう。


 「で……、本題に戻るけど。冴香ちゃんはこれからどうしたいと考えてる?」


 「私は……」


 まだ答えを出せていない。
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