夢物語
 「うまくいくと思うよ。だって今まで私たち、ずっと見てきたから。西本くんと冴香ちゃんは、絶対に合うと思う」


 仲間同士だった頃は、スポーツや好きなバンドの話で果てしなく話が盛り上がり、楽しかった。


 興味の対象がよく似ていたため、いくら話しても尽きることなく……。


 あの頃、友達以上恋人未満だったあの頃のほうが幸せだったのかも、なんて考えたりもした。


 一線を越えてからは、一つになれる充実感を確かめることができ、絆が深まるものだと信じていたけれど。


 離れている時に感じる孤独もまたこんなに深いものだとは、昔は考えられなかった。


 「彼女のこととか周囲の問題を抜きにすれば、西本くんと冴香ちゃんはいい組み合わせだと思う。ただ一つ懸念材料が。一度浮気とか不倫を経験した人って、反省したとしても何かのきっかけでまた繰り返す傾向がある。一度手を染めると、ハードルが低くなるみたいなんだよね」


 「!」


 長原さんは私の過去の不倫経験を知っているのだろうかと焦った。


 もう当時を知る人は誰もいないし、当事者と共通の知り合いももはや存在しないはずなのになぜ……。
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