夢物語
 「女性関係はそれなりにあるとは知っていたけれど、サークル内では手を出さないと飲み会なんかでも公言していたから、絶対ないと思ってたんだけどね。にもかかわらずこうやって行動を起こしてしまったんだから、今後もう二度とないとは限らない。冴香ちゃんを上回る相手が現れた時、絶対に心変わりしないとは保証できない……」


 あ、私のことでなくて西本くんのことだったのかと分かってひと安心。


 私の過去のトラブルは、このまま誰にも引き上げられることもなく、深い海の底に沈んだままであってほしい……。


 「そんな感じで最終決断は冴香ちゃん次第だけど、どっちの道を選ぶにしてもよく考えてからにしてね。私も松本さんも、そしてチームのメンバーもみんな待ってるから」


 「本当にご迷惑おかけして……」


 重ねて今回お騒がせしたことを詫びて、間もなく電話を切った。


 「……」


 カレンダーを見たら、もうクリスマス目前。


 クリスマスや誕生日は会えないのは承知の上だったけど、こんな形で会えなくなるとは……。


 一線を越えてから、会えない日の孤独が深まったことを改めて思い知らされる。


 その時。


 ♪♪♪♪♪~


 通話を終えたばかりの携帯電話から、また着信音が!


 ディスプレイには西本くんの名前が……。
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