夢物語
 翌日朝の告別式には、私は大学の授業のため顔を出さなかったけれど、両親は有休をとるなど都合を付けて参列していた。


 西本家が落ち着いたら家に呼んで久しぶりにバーベキューしようかとも計画。


 それが実現したのは、夏休みのことだった。


 我が家の庭で夏場に何度か開催するバーベキューに、西本親子を招待。


 以前は毎年ご一緒していたけれど、近年は仕事の多忙化などでなかなか機会がなかったものが、この機に復活。


 西本さんも優くんも比較的明るい表情で安堵した。


 「それでもなお毎日普通に朝は来ますし、仕事はありますし。いつまでも泣いてる暇はありませんよ」


 火をおこしながら、西本さんは父と近況報告をしていた。


 「たまにカーテンが揺れたり、後ろで物音がすると、あいつがいるような気がして振り向いてしまうんですよ。でもそこには誰もいない。そしてもうこの世にいないことを改めて思い知らされます」


 四十九日まではバタバタしていてあっという間だったけど、区切りを終えると亡くなったことに対する寂しさをじわじわと感じているようだ。


 「……優くんは中学校、どんな感じ?」


 黙々とお肉を食べていた優くんに話しかけてみた。


 日常生活ではなかなか中学生男子と話す機会はないので、どんな話をすればいいか悩む。


 「小学校のメンバーがそのまま持ち上がったので、顔見知りばかりで思ったより緊張しなかったです。クラス替えがあったような感じで」


 とはいえ小学生の時とは違い制服もあるし、英語は始まったりで授業は難しくなるし、部活動も始まる。


 でもそれが幸いし、慌ただしい毎日の中で悲しみに暮れてばかりいる暇はないようだ。


 「部活動は、何やってるんだっけ」


 「野球やサッカーも好きなんですが、小学校低学年の頃からやってないと周りになかなか追いつけないので、違う種目にしました」


 勉強ばかりではなく、スポーツも満喫できているようでよかった。
< 262 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop