夢物語
 私は現役の時、センター試験で失速。


 二次試験で盛り返そうと頑張ったけれど、センター試験での点数が延びていなかったのでカバーし切れなかった。


 滑り止めのつもりで受けていた私立大学も、まさかの不合格で浪人生活一直線。


 翌年がさらに受験戦争厳しくなると聞いていたので不安だったけど、もう一年頑張って志望大学目指したものの……。


 二度目の冬も不合格。


 さすがに二浪は限界だったためで、第二志望で別日程で受けて合格していた国立大学に進学することにした。


 それから二年。


 本来ならば教員養成が目的の大学で、私は教員採用試験を受けずに司書の資格を取得しようとしている。


 教員を目指さない学生は少数ながら存在するけれど友人たちが来年の教育実習の話で盛り上がっているのを見聞きすると、一種の疎外感のようなものを感じざるを得ない。


 せっかく教員免許を得られる環境にあるのに、もったいないような気もするけれど……。


 「優くんって大学はどこに行きたいとかある? まずは高校が先だけどね」


 「うーん。仕事とかそういうこと一切考えなくていいのなら、外国語や文化とかに興味があるんだけど……」


 優くんはサッカーを通じて海外の文化などに関心があり、英語も得意だった。


 「でも優くんは、いずれお父さんの会社を継ぐんでしょ?」


 「……」


 西本さんはユニフォームの背面やゼッケンなどにプリントする会社を経営しており、父の話によると優くんはその後継ぎとして期待されているとのこと。


 でも今その優くんは、微妙な表情を見せている。
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