夢物語
 「お待たせしました! おつまみのカマンベールチーズの準備ができましたよ~」


 聞いていなかったふりをしつつ、偶然を装って私は振り返り、カマンベールチーズを載せたお皿をテーブルへと運んだ。


 「おっ、お待ちかねの」


 お酒のおつまみを心待ちにしていた一同は、テーブルの上に置かれるや否や、カマンベールチーズに刺さったつまようじに手を伸ばした。


 先程の西本くんの、イメージとは真逆のクールな発言に驚きを隠せずにいた辺りの人たちは、カマンベールチーズをきっかけに違う話題へと突入していった。


 私は何も聞いていないふりをして、その後の話題へと加わった。
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