夢物語
***


 「よかった……」


 黄昏時の帰り道。


 自宅へと向かって一人で歩きながら、そんなことをつぶやいていた。


 今日参加していた中で、長原さんはアルコール類を一切口にしないため車で来ており、飲酒メンバーを車に乗せて送り届けていた。


 ワンボックスカーのため、私以外の全員は乗り込むことができ、近場の人は自宅まで、西本くんみたいに距離がある人は最寄り駅まで送ってもらっていた。


 私は定員オーバーのため、歩いて帰宅。


 会場の松元家から我が家まで、徒歩で十分程度のためさほど苦にならない。


 ほろ酔い状態で、ウォーキングは適度な運動。


 寒くもない暑くもない初夏の日の入り直後は快適で、木々や草の匂いが爽やかくらいだった。


 松元さんの家は新興住宅街で、大きな通りを境にして私の家のある旧来の住宅街へと切り替わる。


 境目のその通りのそばには、寂れた神社がある。


 神社は小さな林のように木々で囲まれ、住宅街の中に点在する緑地となっている。


 開発が進み、緑が少なくなったこの地域の、数少ないオアシスとなっている。


 私が独り言をつぶやいたのは、まさにその神社付近を通りかかった時だった。
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