夢物語
 「ということは、西本くんは晴れてフリーの身になったってことか」


 「そうですね」


 主な食材はほぼ食べ終え、食後のアイスクリームを味わっていると、そろそろ閉店間近。


 「冴香ちゃんは、西本くんなんてどうなの?」


 やはり矛先がこっちに来る。


 私は一応このサークルでは、数少ない独身女性だから。


 西本くんとは一緒に試合に出たり、スポーツ観戦の話などをしたりなど、共通の趣味などが多かったのもある。


 とはいえ、


 「まさか。有り得ないでしょう。年齢差あり過ぎだし、私は対象外ですよ」


 私と西本くんの年齢差は……八歳。


 「それに……、独身者に戻ったのなら、きっと引く手あまたでしょう。きっともう新しい彼女とか、見つけてるんじゃないですか」


 私たちの持つ世界は、何もサークル内だけではないのだし、そのような外部の世界で次の相手を見つけている可能性は高い。


 確かにメンバーの離婚発覚という重大事ではあったものの、結局のところ私には全く関連のない次元で発生している事態という認識で、このまま私に関係なく物事は過ぎていくと思っていた。


 ……この時点では。
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