夢物語
夏
①
***
「聞いた? Kさんって東京からこっちに戻って来たんだって」
「えーっ。じゃSさんとより戻すのかな?」
急にSさんの名前を耳にして焦った。
先日、悪夢の中で再会したばかりだったから。
……今夜もチームの練習日。
試合形式の練習の合間に、小倉さん塩田さんと世間話。
その際突如として、話題がSさんのことになったのだった。
「冴香ちゃんはSさん知ってたっけ?」
「ランクが違うから、対戦したこともないかもね」
私がこのチームに入って以来、Sさんの話題が出た記憶はない。
あんな夢を見た直後だから、余計に焦る……。
「あ、名前くらいなら」
さりげなくごまかした。
完全に否定すると、私とSさんの過去の因縁が万が一知られた際に、嘘をついていたことがばれてしまうのでまずい。
Sさんとの因縁が発覚するということ、すなわち私の若い頃の不倫トラブルが、このチームの人たちに知られてしまうということ。
結果的に不倫の件は噂の域を出ず、何とか推定無罪を勝ち取ってはいたものの……私の中では最大級の黒歴史。
ここのメンバーには絶対に知られたくない。
特に西本くんには……。
「聞いた? Kさんって東京からこっちに戻って来たんだって」
「えーっ。じゃSさんとより戻すのかな?」
急にSさんの名前を耳にして焦った。
先日、悪夢の中で再会したばかりだったから。
……今夜もチームの練習日。
試合形式の練習の合間に、小倉さん塩田さんと世間話。
その際突如として、話題がSさんのことになったのだった。
「冴香ちゃんはSさん知ってたっけ?」
「ランクが違うから、対戦したこともないかもね」
私がこのチームに入って以来、Sさんの話題が出た記憶はない。
あんな夢を見た直後だから、余計に焦る……。
「あ、名前くらいなら」
さりげなくごまかした。
完全に否定すると、私とSさんの過去の因縁が万が一知られた際に、嘘をついていたことがばれてしまうのでまずい。
Sさんとの因縁が発覚するということ、すなわち私の若い頃の不倫トラブルが、このチームの人たちに知られてしまうということ。
結果的に不倫の件は噂の域を出ず、何とか推定無罪を勝ち取ってはいたものの……私の中では最大級の黒歴史。
ここのメンバーには絶対に知られたくない。
特に西本くんには……。