夢物語
 ……桜が散りゆく季節だった。


 焼き鳥屋さんを出て駐車場に向かう際、お店の脇に植えられている桜の木から、風に吹かれて花びらがひらひらと舞っていた。


 「これってかなり、幻想的じゃない?」


 一緒に寄り道していた女子メンバーも手をかざし、花びらを手に取っている。


 「男子も誘えばよかったね。西本くんも」


 「いれば楽しかったですね。試合のチーム編成についても話かったですし」


 「いやいや。せっかく桜の季節なんだし、もっと色っぽい話でも」


 「……今年も花見計画、結局実行されずじまいでしたね」


 またしても冷やかされそうなので、さりげなく話題を逸らした。


 「花見、みんなの都合はなかなか合わないし、合った日は天気悪かったしね」


 「来年は西本くんと二人で行きなよ」


 「だから、もう絶対相手いますって」


 エンドレスでそんな話題を繰り返しながら、ちょっと離れた駐車場まで歩いた。


 桜の花びらと、柔らかな月の明かりに包まれながら。
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