夢物語
 このチームで知り合って以来、地元チームのみならず、代表選の話題などで常日頃盛り上がっていた。


 せっかく野球もサッカーも地元球団があり、一度一緒に観戦に行ってみたいとは思ったこともあったけど。


 妻帯者を二人きりでは誘いにくく、ずっと自粛していた。


 「今度、サッカー観戦行かない? ……行きたい人集めて」


 そして今回も彼女に遠慮して、二人きりでは誘えない。


 「あ、いいですね。J1ですと対戦相手も日本代表クラスが多いですから、参加者も集まりそうですね」


 「ドーム開催の時がいいかな。近々日程調べておくね」


 「僕、知り合いにツテがあって、チケット安く入手できますんで、行く日決まったら調達してきますよ」


 また現れた「知り合い」という言葉にも、彼女の影を感じる。


 今私に向けられている爽やかな笑顔も、私だけのものではないとふと思い知らされる。


 西本くんがコーヒーをおかわりに席を立った際に、辺りを見回してみる。


 平日の夜遅く、郊外のファミリーレストラン。


 さほど客はいない。


 私の家からかなり近所ではあるものの、知っている顔は一人もいない。


 ……もし私の知り合いがこの店に来ていて、私と西本くんを見かけたとしたら、どう感じるだろう。


 さすがに親子には見えないとは思うけど……、普通に考えると姉・弟?


 恋人同士と思い込む人はいるかな?
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