鬼畜な兄と従順な妹
事実婚 ~幸子Side~
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「幸子ちゃん、泣くのはおやめ? 誰も君達を引き離したりしないから。真君が変な意地を張っても、無駄な抵抗ってものさ」

「本当に?」

「ああ、本当だよ」

 田原さんに優しく言われ、私は泣くのをやめた。お兄ちゃんは、ちょっとヘソを曲げた感じだけども。

「私は一瞬、それもアリかなと思ってしまったが、真君は村山の家を出ちゃだめだよ。幸子ちゃんが許さないし、幸久は悲しむし、そもそも、偽装結婚が台無しになるからね。なぜなら、君は村山家の大事な跡取りなんだから」

「でも、村山家の血を引いてない俺なんかが、村山家を継いでいいんだろうか」

「そんなに血を気にするなら、幸子ちゃんと結婚すればいいだろ?」

「えっ?」

 お兄ちゃんとハモってしまった。

「おじさんはさっきも結婚出来るって言ったけど、本当に出来るのかな、俺達」

 お兄ちゃんが私と同じ疑問を言ってくれた。

「出来るよ。幸久と加代子さんが、いったん籍を抜けばいいのさ」

「離婚って事?」

「まあそうだが、一時的だし、形式の問題だし、それぐらいは構わないだろう。それにあの二人なら、世間体なんか気にしないはずだよ」

「そっか。良かったな、幸子?」

「うん、本当に良かった」
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