鬼畜な兄と従順な妹
「は、はい」

 お兄ちゃんに怒られちゃった。私は気分が舞い上がっていて、お兄ちゃんの質問に答えなかったからだ。失敗しちゃったな。

「俺が何かを言ったら、すぐに返事をしろ。わかったか?」

「はい」

「よし。それでいい。そこに座れ」

 私はお兄ちゃんが指さした先のソファに、ちょこんと座った。お兄ちゃんって、実はすごい”俺様”なんだわ。下にいた時のお兄ちゃんとは、まるで別人みたい。もしかして、二重人格?

「さっきの答えは?」

 お兄ちゃんは私の前に座って脚を組んだのだけど、すごく長い。なんて、ぼーっとしてると、また怒られちゃうよね。

「はい、びっくりしました」

「何にびっくりした?」

「お部屋の豪華さと……」

 これは言っていいのかなあ。

「後は何だ?」

 正直に言っちゃおうっと。

「お、お兄ちゃんの話し方です」

「だろうな。今のが俺の”素”の喋り方なんだ」

 へえー、そうなんだあ。って、また怒られちゃう!

「はい」

「お、おい。何でも返事すればいいってもんじゃないぜ。聞かれた時だけ返事しろ」

 あ、お兄ちゃんが笑った。しかも、下で見た笑顔と違って、可笑しそうに、子どもみたいに。きっと今のが、お兄ちゃんの”素”の笑顔なんだと思う。という事は、下で見た笑顔は作り笑い、なのかな?

 と思ったのも束の間、お兄ちゃんはすぐに怖い顔に戻った。
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