鬼畜な兄と従順な妹
「返事は?」

「どんな事をするんですか?」

 って、聞いてみた。私の思い過ごしで、実は他愛もない悪戯とか、そういう事かもしれないと思って。

 するとお兄ちゃんは私の質問に答えず、長い脚を解いてすくっと立ち上がった。そして私の前に立って、これまた長い腕を伸ばすと、私は腕を掴まれて引っ張り上げられた。

 そして、これまた長いお兄ちゃんの指が私の顎に掛かかり、くいと顔を上げさせられたと思ったら、次の瞬間には視界を塞がれ、私の口に何かが押し付けられていた。

 その何かはお兄ちゃんの唇で、つまり私はお兄ちゃんにキスされた、という事に気付くまで、1秒か2秒かはわからないけど、少なからず時間が掛かったと思う。お兄ちゃんの動作が、あまりに速かったから。

 私は口を結すび、顔を振って逃れようとしたのだけど、お兄ちゃんに頭を掴まれ、動けなくなってしまった。そして、唇をお兄ちゃんの舌で強引に開けられて、そのままヌルっと口の中に舌を入れられてしまった。

 お兄ちゃんの舌を前歯で噛んでしまおうかと思ったけど、もしそれでお兄ちゃんが死んだら大変と躊躇していたら、その舌が私の舌に絡んできた。

 気持ち悪いのと息苦しさで、必死にお兄ちゃんの固い胸を手で押したら、ようやくお兄ちゃんは離れてくれた。

「酷い……」

 ファーストキスは、素敵な人としたかったのに……
< 19 / 109 >

この作品をシェア

pagetop