鬼畜な兄と従順な妹
「お二人のお荷物を運び終えました」

 運転手の黒崎さんが、息を切らしながら言った。

「では、私がお部屋までご案内いたします」

 と爺やが言い、すかさず俺は、

「幸子には、僕が案内するね?」

 と言った。聞けば、幸子の部屋は俺の部屋の隣らしい。そう言えば、今まで使われていなかった部屋なのだが、しばらく前から人が何度も出入りしていたっけ。

「行こうか?」

 と俺は言い、幸子の小さい手を掴んだ。幸子は、ハッとして手を引こうとしたが、もちろんそんな抵抗は許さない。俺は幸子の手をギュッと握り、階段をゆっくり上がって行った。
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