鬼畜な兄と従順な妹
 ほら、やっぱりキスを避けられなかった。なんて考えたりして、不思議と私は冷静だった。

 唇が触れるだけで、昨日のように舌を入れられたりはないから、気持ち悪くならないばかりか、むしろ気持ちいいって思ってしまった。のだけど……

 不意に胸を触られてしまった。もちろんお兄ちゃんの手で、包み込むような感じで、ムズッと。男の人、というより、自分のではない誰かの手で、胸を触れたのはたぶん初めてで、恥ずかしくて、でも気持ちいいような、何て言っていいかわからない、変な感じがした。

 でも、お兄ちゃんの唇が離れた瞬間、私は思った。こんなのダメなんだって。そもそもはお兄ちゃんが悪いのだけど、キスされて、胸を触られて気持ちいいとか、そんな事を思う私も同罪だと思う。

 だって、お兄ちゃんと私は、半分は血の繋がった兄妹なんだから。

「兄妹で今みたいな事、しちゃいけないと思う」

 お兄ちゃんにもわかってほしくて言ったのだけど……

「生憎だが、俺はおまえを妹とは思ってない。だからキスはするし、もっと先の事だって出来るさ」

 お兄ちゃんはわかってくれなかった。それどころか、”もっと先の事”って言った。それって、つまりは……

 一瞬だけ想像してしまった。私がお兄ちゃんに、組み敷かれた光景を。でも、お兄ちゃんは本気で言ったのだろうか。そんなおぞましい事を、本当に出来るのかな。お兄ちゃんが認めないとしても、兄妹なのに。

「酷い……」

「恨むなら、母親を恨め」

 お兄ちゃんはそう言ったけど、もちろん私は母を恨んだりはしない。母どころか、誰も恨んだりはしないけど、強いて恨むとすれば、運命かな。
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